「冬の人」/菊尾
 
着脱可能な精神で夜と昼を繰り返したい 
希望の面積は年々縮小傾向にある模様 
カシオペア座が描く僅かな亀裂 
空が落ちたら僕達はどこへ逃げようか 
計算に基づく誰かの図式 
似たような顔で似たように笑う 
そんな事はもういいから 
僕達は見知らぬ時間の狭間で 
残すことも考えずに手を広げていよう 
くだらない事で傷ついた 
取るに足らない言葉ばかり残っている 
眠くならない 
眠り足りない 
優しさだけでは形作れない二人の関係は 
どこにも置き場所が無い 
人に言えないような事の全てが 
間違いだなんて限らないんだよ 
焼却炉の窓を閉めて火を付ける 
知っていた想いは空に吸い込まれる 
夜にはきっとこの場所の熱も冷めてしまう 
カラスが羽ばたくのを見た
チャイムが鳴り響いて 
夜が灯り始めた 
僕達は慣れない感じで話し始める
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