肉球の無い猫/沙虹
 
肉球の無い猫は
ビヤ樽のような胴回り
胴長く四肢は極端に短い
転がるように動く
十二の動物の輪を横目に見やる
孤高の脱落者
日がなカルヴァドスを舐め舐め
嘘を書けとうそぶく
だから私は
こんな文章を綴っている

不幸は猫の姿をとるという
季節も城も流れはするが、
「無疵なもの」など、たんと在る!
この不幸に私が望んで寄り添っただけ
いつまでもどこまでも
幸福からは程遠く
懐疑の連鎖の已むことなく

全て佳し

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