降りつのる淫雨のように/hon
 
かすかな吐息が女の口の端を震わせ、低い破裂音を発すると、どこからかペパーミントの香りが漂った。女は黒い手袋を外さなかった。全裸になって、黒い手袋と靴下のみ身に付けていた。また、頭に数本の孔雀の羽根を刺して飾った茶色い帽子をかぶっていた。そこから垂れた黒色のベールが女の顔全体を覆っていて、男は女の顔を見ることは叶わなかった。女は仰向けに横たわった男に跨り、男を挿入させたまま、ゆっくりと赤子をあやすようなテンポで腰をグラインドさせた。外ではシタールの音が幽かに響いていた。香を焚いた紫色の煙が漂う薄暗がりの中で、男の目には、女の首と手先と足先が消えているように見えた。女が黒い手袋と靴下を付けていたゆえに
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