降りつのる淫雨のように/hon
 
しにぶら下げた幹部将校連中の、もっともらしく吹聴する事など、ともかく話半分にしか過ぎないですからな……馬丁が居酒屋で集まってやらかす、手のこんだ猥談のようなもんです。水死体ですな。ヨッ、とか、ホホィ、とか言ってりゃ、色褪せた退屈な時間もなんとかやりすごせる。まあ、我輩の手入れの行き届いたカイゼル髭に免じて、無礼の段、何とぞ見逃してやっていただきたい次第でして。なにしろ平日の昼間っから、血の気の多い連中でね。今、何℃ですか」
透明な日傘をさしたフロックコートの紳士が、見たこともない右隣りの部屋から怒鳴り声で、無言で、あるいは猫なで声で、具体的な疑義をにわかに呈した。それはあられもない三重奏となって
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