「土曜日、手前」/菊尾
 
いつだって冬色の色彩感覚で 
何にしたって閉鎖的 
開いては、閉じる 
掴んだ時のぬくもりと 
離した時の熱の掃け方を見つめている 
囃(はや)したてたって何も出てきやしないよ 
焦らせても泥に足を取られるだけだよ 
酔えないって 
色水としか思ってないからだろ 
空色の雨が降って 
粒の一つ一つに見えている世界が反射して 
切れ間から覗くのは嘘が無い国の断片 
遠い話を思い出して 
君は何か掴もうとする仕草 
無口な代わりに細い腕は植物のように空へと伸びる 
千切った記憶は改善されて 
幸せです。と君は手を振っている 
あんな形の線引きは俯く数だけ増やしていった 
本当は改悪です。知っています。 
言い逃れられないから 
根元から引き抜いたんだ 
嫌だから 
あてられる目なんてもう無いから 
そうやって明け方に 
見知らぬ場所へ溶けていった 
消えないのは 
右斜め下への視線
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