白熱/佐々宝砂
 
なものを凝視した それは ちょっとだけ 俺のなかのホワイトホールに似ていた 俺は紙のうえの仮想のホワイトホールをカッターで切り刻んだ 切り刻まれたホワイトホールは切り刻まれてなおホワイトホールで 切り刻まれたホワイトホールは痙攣し白熱し 白熱するホワイトホールからすべてが吐き出されてきた すべてだ タバコも 蟹も 洋子も あんたも 俺も 政治家どもも 教科書も ホワイトホールも みんながみんなあのホワイトホールから現れたんだ


4.

不在の騎士は誰よりも賢く誰よりも強く誰よりもハンサムだったが それは不在の騎士が不在だったからだ とカルヴィーノは書いただろうか 書いてなかったよう
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