面影/AKiHiCo
 

声が醜いのだと言うのです

僕は母君を想っておりますが
母君は僕を疎ましく
常々感じていたようです

そのため僕は家へは帰れないで
かれこれ数年が経ちました
握り締めた小銭で
傘を買いましてもいずれ
雨は降り止むでしょう

それよりこれで靴を買いましょう
直に寒い冬の季節が訪れます
裸足では凍えてしまいますから

幾日か過ぎたある日
真新しい靴を履いた僕に
あの時の婦人が声をかけました

案の如く傘ではないのですね、
婦人は笑顔で微笑みながら
後ろを向きながら呟きました

彼女の後ろで縛った髪飾り
どこかで
見覚えがありました
ゆらりゆらゆら ゆらゆらり

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