わたしがわたしを忘れて/よしおかさくら
わたしが
わたしを忘れるようになって
それでいい
あなたの声がする
欲しいものなんかない
わたしは空を見上げて
空の
落ちてくるのを待っている
運がなければ果物のひとつも
ねえ
言葉の一文字も無駄遣いしたくない
口から出任せという姿になりたい
それでいい
あなたの声
なんて深いんだろ
なんで忘れたりしないんだろ
穏やかな湖に
まだ自分を置いている
疑う心はこの水から現れる
手に取り
飲み干すことも
沸かすこともなく
ただある
わたしがわたしを忘れるようになって
忘れられなくなってから
ただある
すれ違う目を見ている
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