靴の下/紫苑
 
もし
人の歴史は時間という名のベルトコンベアーに乗って
その中で

創ったり壊したり
与えたり奪ったり
拾ったり捨てたり
消したり遺したり
愛したり憎んだり
慈しんだり蔑んだり
誇ったり妬んだり
救ったり殺したり

そうして生きて
死んで往くことなのだとしたら

僕が歴史の時間に習うことは
そんなベルトコンベアーから降りた
命の死体たちが端に陳列している後方を
望遠鏡で眺めることで

考古学者たちは降りた死体へ必死に逆走して
死体たちや死体たちの遺物や周りの風景を
知ろうとしていて

科学者たちは未踏の先へ誰よりも早く疾走して
見据える景色を証明
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