世界/もも うさぎ
外にでようとした。
窓の向こうには
わずか10センチほどの 窓枠のさんがあるだけで、
彼が外にでてしまったことに
あたしは 今度はひどく悲しくなった。
彼は月の白い灯りを存分に浴び
頼りない足元を 気にも留めていないようだった。
地上はあまりにも遠く、月の方が近いかもしれない。
窓枠を唯一つかむその指を
あたしは すべてを動員して祈ったように思う。
彼は無事にオフィスへとすべりこみ、
月はまた遠ざかっていった。
あたしは何も言わなかった。
「怖かったでしょう? きみは こういうのが嫌いだから。」
と、彼は 言った。
あたしたちは、またもとの仕事に戻った。
流れ星も、雷も、隕石も落ちない。
目の前に広がる 言葉では言い尽くせない夜景。
夜はあけず、均衡の美しさは衰えず、
あたしたちは いつまでも 世界の管理を続けた。
〜世界〜
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