目覚めのお茶/石川和広
疲れて食卓にたどりつく
おやじは定年退職した
おやじがつくった飯を食う
箸を落とす
拾おうとする
かがめる腰が、まげにくい
どうも
おもいどおりに体動かん
ものわすれる
あれも
これも
空気を吸ってることも
タバコをすいかけてたことも
灰が落ちそうなことも
あぶない
あぶない
母の声
ゆうぐれに
救急車のサイレンの音
どこだろう
みんなで気にかける
どこかな
お迎えきたか
父
まだまだ
母
ぼくはいつ頭がはっきりするんだ?
死者に刻まれた
木の裂け目のような
さざなみの
岩礁の
無限に
この夕暮れに
しずかな
顔を思い出し
一時間震えて
少し気が確かになり
母に
お茶をたのむ
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