「trust」/菊尾
僕に無いものを君が持っていた
青白い夜の明りの中で身体の重みだけを信じていた
床に映された影をベッドの上から眺めていた
アルコールの揺れる音
外したコンタクト
倒置法で話す癖
毛布の肌触りが好きなこと
何度抱き合ったって距離を感じてしまうのは
君を信じられていないから
いつもみたいにまた朝が来て
君の背中を見送って
ベランダから手を振って
次の約束はいつだったか
片付けられない部屋の中で考えている
ずっと傍にいるよと君が言った
消えるとしたらきっと僕だろう
内側で広がる無色の景色
目に見えない君自身
脆弱な人間
それでも笑いかけてくれる君
余分な思考を捨てている
愛するために
何度も
何度も
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