白い夏/前田ふむふむ
さい。
五杯まで、おかわりは自由です。」
大きくかたむく燃える空の下、
新宿の交差点は、荒れ果てた無人の声を、吹き上げている。
使われなくなった傘の群を、隔離病棟に閉じ込めた選挙ポスターが
ふくみ笑いをしている。
午後のひかりは、放物線を描いて、卒なく、
わたしの荒寥とした身体を、四方から照らして、
暖めている。
わたしは、コーヒーを飲み、けだるい香を味わう。
いつの間にか、通り雨が、頬をつたい、
寂しく羽虫が、イスに、
いつまでも止まっている。
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