星の子供たち/Utakata
1.
ひとりの旅人と行き逢った。夕焼けのきれいな日で、
暗くなりはじめた道を鮮やかな赤色がずっと染めてい
た。道端の小さな岩に腰掛けて、旅人の勧めてくれた
煙草を吸いながら少しずつ話をする。巡礼なのだと彼
は言った。北の地平線から吹いてきた初秋の風が、僕
たちのいる一本道を横切って吹きぬけていく。別れ際
に、旅人は僕にまだ煙草の数本残った見慣れないデザ
インの箱をくれる。代わりに何かを渡そうと思ったが、
あいにく適当な物は何ひとつ持っていなかった。彼は
軽く片手を挙げ、闇が空を覆いかけている東へと続く
道へ歩き出す。沈みかけた太陽が投げかける光に背を
向けて歩く彼の姿をしば
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