柿を食べる/楢山孝介
「渋いんだろ」
「全然渋くない」
「見た目まだ青いもん」
「人を見た目で判断しない」
「柿だし」
「渋くないから」
「渋くて渋くてたまりませんていう顔してるし」
「向かいの奥さんも渋くないって」
「奥さん食べてないだろ。あ、こんちは」
「柿、嫌いなんだ」
「好きだけど、渋いのは食べないから」
「あたしが嫌いなんだ」
「いきなり何言い出すんだ。好きだよ。大好き」
「いや、あたし、柿嫌いなんだ」
「じゃあなんで食べてんの」
「うちの庭に生えてるんだから食べなきゃいけないと思って」
「無理しなくていいよ。人にあげたらいいし」
「でもそれは何かくやしいし」
「柿の木
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)