ハピネス/いとう
 
ハピネス。
抱きしめられる心音のひとつひとつに
罪は宿っているのです
バファリンの半分が優しさでできているのなら
人間、と呼ばれるものの半分は罪でできている
確実に、ハピネス。
抱きしめられた息子の心音に、ハピネス。
止まろうとする血の流れに、ハピネス。
もう一度言ってみる
私たちが生き残るのはとても難しい

「私のせいではない」と
神様はちくわぶをモソモソと食べ続ける
人によって名付けられたものを食べ続け
神様はさらに生き残る
私は知らない
私は何もしていない
私、というものが存在するのなら
私が名付けたものは存在しない
ハピネス。
息子を殺したのはミサイルではない
戦争、という不可思議な概念でもない
そしてもちろん私でもないので
私は生き残る
私に罪はない
私ですら、名付けられたものに過ぎない
ハピネス。







※「バーリドゥ、ウンム、バーリドゥ」…アラビア語。「寒いよ、母さん、寒いよ」

初出:暫定 フルーツバリケード「定義」
http://fiction.jp/〜letsla/


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