彼岸の雪/フユキヱリカ
 
おとなはみんなこまった
あるいは
憐れむ目をしている

幼さは無垢である
無垢は無罪ではない
うつくしいことばを
どれだけならべても
乾燥しきった
血色のない唇から
つたう おとの
何もひびかぬは
どうしてなのか
と、
たずねるしか知らなかった
わたしは
ゆうに母の歳を越えた

東京生まれの姪は
にごりのない
きれいなことばをはなし
お遊戯するように
おばあさまはおはかに

屈託なく言う
そのひとみごしに
生いを重ねあわせ
なぜか
わたしは訛りを隠した



屋根から滴る雨粒が
芽を伸ばした
さんさじの木におちて
冬を越してい
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