「ベランダと猫」/ソティロ
ベランダと猫
ある事情のために
彼は夏の終わりの
しばらくの間
川の近くにある
見晴らしの悪い
アパートで
猫と暮らした
そのアパートの中で
生活、という
よくわからないものを
一通りこなした
猫に餌も忘れず与えた
以前から
彼は不思議に思っていた
並木道を歩いてゆく親子、
左右にいる両親と両手を繋ぐ子供
その様子を見て
泣きたくなることがある
失われるものを儚んでいたのだろう
瞬間は常に奪われていく
子供は大きくなって、
大きく見開いていた瞳を
見たくないもののために
いつか閉じたりもするだろう
家族は
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)