ゆく/soft_machine
 

サイレンがゆく
都会ではあたりまえの
田舎ではとてもめずらしい
いのちに象があるならこの音だろうか
いのちが鐘の音であった昔のもっと前から
一羽がはばたいてあとはただ盛り上がるだけの鳩の群れが
今つぎつぎと土を蹴りビルを抜けそして朝日をあび
風の輪をみがきながら街を一瞥して大空をゆく

部屋の暗がりへたばこの煙がただよって
生活は身もゆすれない影をかぞえる
誰かの吐いた息がとてつもなく
おそろしいものになる
その時もひとりマネキンは立たされ
通りすぎる人達をまっしろな眼で見つめ
孤独なマネキンは語るマネキンだけのことばで
マネキンのしあわせを飾られたおりの奥から
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