捨てられないもの/砂木
 
雨という予報で
雨合羽を着込んでの
葉取りの作業と
覚悟は決めていたのだが

袖口をカバーしたつもりでも
やがてしみこんでくる雨水
顔に落ちる雫に
少しづつ体温が冷える

まだ これから熟す
林檎のまわりの葉をすべて落とし
枝の下や葉の下の色づかない部分に
太陽の光があたるように
軽くねじって位置をずらす
ひとつ ひとつ

指先に集中して もうでている
来年の芽を欠かないように気をつける
芽は葉に覆われた 枝先にある
気づかずに摘んでしまったら
来年の実は実らない
かすかなふくらみを
林檎の木に たくし

雨の鎖につながれたような気分で
作業をし
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