俯瞰して、町の路地をなぞる/水町綜助
 
いつもの路地で歩を止めて
通りの向こうに目を遣れば
隙間だらけの
小さな町を
関係のない
繋がり方をしている
建物と僕と真鍮と
霊魂とドブネズミと太陽と

一つの器に雨が降る
笑顔でもつれて
ささくれる
僕は
やせてしまったよ

真横から見た眼鏡レンズの厚さ
その気の遠くなるような距離に
刷り込められた摺り潰れた微かな気泡は
真空なので
道理で恩愛などは
生まれない筈だ

瞳はしかし町を映す

オオスカシバが花の蜜を吸うように
飛び
理髪店の螺旋広告を逆回りする秋が
来たから
何だと言うのか
何も喪失していない

この入り組んだ生家の中
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