音の鳴る、風の吹く/ブライアン
 
改札で切符を受け取る駅員。
雪崩れ込む乗客たちの数は10数名程度だった。一時の激しさが、その後の駅の静けさを運んできているように思える。
立ち去る人、駅のベンチに座り込む人、それらの人々を駅員は眺め、改札から駅員室へ向かう。暑い秋の日差しに、線路の向こうに見えた田は黄金色を輝かせていた。所々、緑に生い茂る樹木が見える。そこがすべての立ち位置だった。

駅を出ると、静かな道が殺風景な町を繋いでいた。歩く。靴の音が鳴る。にわかにこみ上げる思いは、懐かしさよりも、悔しさだったように思える。ここに立つことを許されたのだろうか、と天を仰ぐ。だが、答えなどはない。
切り離された空が、冷たい風を吹かせた。
通りに人はいなかった。車の往来が激しいわけではなかった。だが、道を尋ねた人は、「ここはもう車社会だからねえ」という。

大きな荷物を背負って立っていた。激しく静寂がせきたてるのは、完璧な世界に欠如した体だけだ。この道を歩き続けるしかなかった。ただ、衰退への道程を歩むだけだった。
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