水母/こしごえ
 

私は、私の影であり
影は、影の影である。

どこまでも
黒く透ける現し身を
冷たい風がなぞり
さみしい熱を奪い去っていく
だからといって みたされることはない
このささやきが、色づかない限り


   声の静止


青白い顔をした稜線のそよぎが
ひっそりとしたまなざしで
私の影を続いている

風のしじまが
声を
心の声を聴いて
一羽の黒いアゲハチョウとなり
窓辺から飛び立って舞う

いつかの国の
高くつみあげられた
石の塔の頂で
目を瞑らなければならなかった
声を生き血がさかのぼっていく

空っぽになるまで
うちあける声を放つ充足の
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