レールの上/結城 森士
電車の窓の向こう側の、外の風景のその先
右から左へと過ぎ去っていった心象の中に
少年の頃の自分が口をパクパクさせて泳いでいる
僕は餌なんか持っていない、それなのに
少年の頃の自分が口をパクパクさせて付いてくる
今僕が、電車の中で口をパクパクさせていたら
周りの乗客たちはミンナ口を空けて
サカナのような虚ろな目玉で僕を見るだろう
見ンナ、こっちミンナこっちミンナこっちミンナこっち
こっち、こっち、こっちこっち
おいで、おいで、おいでおいでおいで
ミンナこっちミンナこっち、ミンナコッチオイデヨ
カンカンカンカンカンカン
叫びながら遮断機は降りる
少年の頃の自分は
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