緑色/山中 烏流
 
若葉が芽吹いた時の
頬の熱さを
私は今も未だ
忘れずにいる
 
瞳孔を徐々に開く
その過程の間で
視界が緑に染まるのを
見ないふりをして
 
 
気管をゆっくりと
狭めていく、代わりに
私は誰かの腕を
そっと
首にあてがっている
 
瞬きが途端
止まった刹那にだけ
見える世界があることを
私は
知っている、から
 
 
身震いをする
私の指先からは
 
絶えず、旋律が溢れて
緑色を模している
 
 
そこはかとない緑が
世界の終わりに似ている
と、呟いたのは
私だったのか
それとも、
よく覚えていない
 
若葉が芽吹く
その、瞬間にすら
終わりは息づいていることを
知っていたのは
 
 
途切れる呼吸の側で、
 
緑色は
じっと息を潜めている。
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