幸福の外皮/
 

パイ皮につつまれた子羊の肉がある。

ぱりぱりとしたその外皮と一緒に切り崩され、
皿に敷かれた甘く濃いピノノワールのソースへこてんぱんに塗り付けられ、
ゆっくりと口に運ばれることを運命付けられた肉が、この世界にはある。

その運命を享受出来る者は幸せだ。
何故なら、「幸せ」が、
今自分が向かっているテーブルの、
その上に置かれた皿の、
その上に盛られた肉の、
まるで暴力と同義的すぎるほどの芳香を放つ肉の一片に凝縮されていると、
当の肉片を噛み、噛み、噛み、陶然とし、半ば勃起し、
飲み下す。
その後に到来する「次の一片を」を渇望することのみに集中し、
その度を越した
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