電気恋歌/桜井小春
 
夢を見るほどに

侵されて

それでも

この脳内のシナプスは

あなたにたどり着く前に

途切れてしまっている

から

ピンクと白の

カプセルを飲むのだけれど

一向に

手が届かない。



あなたの細胞

一つ



さえ

逃したくはないのに。



名を呼ぶことも

許されていないなら

せめて

あなたの香りに身を寄せる

一匹の

蝶にならせてはくれませんか。



蜜などいらない。

この鱗粉が果てるまで

彼方

あなた

目指して飛んでいくだけ。



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