乾いてゆく風があった/soft_machine
乾いてゆく風があった
薄れてゆく光もあった
綺麗にされた夏だった
目の前に拡がる
どこか懐かしい景色に
なぜかふるい歌を思い出し
海に腕をさし入れる
かなしみが群れているのは
きっとあの雲を抜けたあたりで
のこされた魂も
そのすこし上あたりに舞っていて
よろこびがうまれたのもあのあたり
動きはじめた手足があった
赤ん坊を抱きかかえる友に
父親の顔というものを
はじめて見た気がした
世界を積み上げてゆく
欺かないことば
あまい息が日に焼けてよりにおう
寝床にほおづえをついて見ている
ぼくのこのいくぶん打ち疲れた
心臓の音が聴こえているかい
波打
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