食の素描#2/
 
「万物には形式がある。形式は必ず崩壊する。万物は崩壊する。」
(ーー吾妻滋郎著『認識の基地』序文より抜粋)



目玉焼きを焼いていた。

朝は数時間前に昼となり、
皿に向かう私の寝癖と腫れた目だけがいつまでも朝のままだった。

油を引かないテフロンのフライパンへ卵を割りいれ、
そのまま弱火でゆっくり火にかける。

フツフツと白身が固まり、
円の外周から中心に向かい、熱波が侵攻を進めていく。
コンロの前に立ち、煙草を吸いながらその様をぼんやりと眺める。
記憶は知らずと、昨夜の狂騒をなぞり始めていた。



「もう一度言ってみろ。
 事と次第によっては、
[次のページ]
戻る   Point(1)