喪主  〜野ばらの庭で〜/Lucy.M.千鶴
 


開いた野ばらの花びらに

光る 雫は

愛に 満ちている


喪主を務める まりこさんは
そんな・・・余裕・・・
まりこさんには・・・ない

手違いがあって
ひたすら 謝りながらも
気丈に振る舞う

日本のお葬式と云うものは
残されたものに
有る意味 優しくできている

とにかく、大変で

悲しいとか
淋しいとか

そういう、言葉すら寄りつけない

でも、 まりこさんは

独り 野ばらの庭先で

そっと 涙をこぼしているかも


そんなとき
どんな 言葉のひとつも
かけて、あげられなくても

気の利いた 歌を詠む 歌人になれなくても
詩人になれなくても
芭蕉になれなくても

構わない

そんなとき

零れた 雫を 受け止めた
野ばらのように

そっと 涙を 受け止められる

愛に あふれた ひとでありたい

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