猫/アンテ
やっぱり
なにも感じない
成美がかわいがっていた黒猫
死んでしまったとき
成美はなんて言っただろう
どうやって
死体を処分しただろう
きっと
近くの林に埋めたのだろう
見上げると
柿の木の枝のあいま
澄んだ青色が広がっている
新月に近いから
空に溶けてしまって見えない
土に埋められるのは
どんな気分だろう
ああでも
今とあまり変わらないのだろう
物置きを物色して
シャベルを見つけだす
家のなかから
電話の呼び鈴が聞こえる
やがて途絶える
穴を掘るのは
あんがい重労働だ
いらないタオルに包んで
また穴をふさぐ
朝起きて
ごはんを食べて
夜に眠る
とても似ている
こうやって
たくさんの物を
埋めて
なかったことにしたのだろうか
また電話が鳴りはじめる
連詩 観覧車
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