『氷点』/東雲 李葉
 
消した落葉にそんな自分を見いだしたの。
冬は嫌い。冷たさはいつも人を孤独にするから。
寄り添っても擦り合っても所詮36℃の体温。
人は一人じゃ救われない。
かじかんだ手は誰かに触れてようやく人の暖かさを知る。
自分しか知らない手の平が自分以外の皮膚に触れる時、
人はようやく氷を解かす。決して交われはしないけど、
人はようやく一人じゃなくなる。あたしは素直に呼吸ができる。
淋しさへの抵抗ではなく、孤独への恐れではなく、
生きてることを忘れそうな冷たさへの純粋な恐怖。
包み込むように命を凍らす、雪の夜は誰かが欲しい。
一人じゃないよ、と赤い指先絡めてきつく教えて。
氷点を越えないうちに誰か熱で気付かせて…。
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