愛の告白/九鬼ゑ女
 
「アイシテル」
そのひとことを
言い出せぬまま
わたくしは オモイを
ごくりと呑みこむ

いえ、言えないのではなく
言ってしまえば
もうそれは
わたくしのくちびるを忘れ
アノヒトの中で燻されてしまうから

そして、
詰まったカタマリのせいで 
アノヒトは喉元で
いがらっぽい咳をひとつする

それで、
咳と一緒に吐き出されたモノは
そのまま転げ落ちて
地べたをノタウチマワルのだけれど
アノヒトは何事もなかったように
わたくしに 軽く会釈して
「ゴキゲンヨウ」と、離れていく

そうなのよ
ほんとに……そんなものなのよ

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