風景が、聞こえる/
 
書けない言葉の奥の
足りない夕日の中に
今も聞こえている風景がある

諦めたその視線に映る手のひらと
日々表情を変えていく ベランダの空

懐かしむかわりに そっと靴を履く
今の僕らなら
こなしていく毎日も
楽しむことが出来てしまうから 


確かめるために誰かと話し
しっかりと自分の表情を変えていく
言えない言葉の奥で
知らない自分が笑い
誰かの大声が それをまた消し去る


見えないことの多さに
目を閉じてしまったいつかの夕暮れ
焼かれていく瞼をこすりながら
足元の固さを確かめていた

眩しさを遠ざけて歩く
日々の隙間の中に
いつかの風景が 静かに響き続けている
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