メドゥーサ/umineko
ぼう、と
汽笛が低く鳴いて
遊覧船が桟橋を発つ
湖の真ん中
ボートにたたずむ私たちを
避けるように右へと進み
エンジン音が湖畔に響く
よかったね
あのまま
まっすぐ来たならオダブツ、だよね
はしゃぐ私をしり目に
あなたのひとみが小さく曇る
と
遊覧船の残したさざ波が
水面を這ってくる
え?
鏡のような湖面は
今や
黒ヘビの形相で
揺れる
揺れる
揺れる
小さなボートの
舟底から
何度も何度も
黒ヘビの声
湖の真ん中で
なすすべもなく揺れる
あなたが
器用にオールを漕い
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)