空は/
松本 涼
考えるのを止めたとき
空は色をすいこんだ
ポカンと見上げて僕は
この地面の名前を忘れてしまう
しばらくは誰も
気付かないかもしれない
僕の一部もすいこまれたこと
あるいは
僕が空をすいこんだこと
そのうち誰かが
気付くかもしれない
僕が輪郭をなくしたこと
あるいは
輪郭以外をすべてなくしたこと
どちらにしても元々が
不確かな僕のことだもの
たいした違いは
ないかもしれない
それに
空はやがて街並みも
人波も
すっかりすいこむ
つもりなんだ
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