ニンジン/P.B.
 
秒針が僕の体を躊躇い無く刻む
僕の体はひたすらに小さく例えば一つ一つの細胞くらいの大きさになっていく
おおよそ60兆は、僕の喜びの数であり、悲しみの数でもあり
そして孤独の数でもあった

細かく刻まれた野菜が二度と全体を取り戻さないように
僕の体も全体を取り戻すことは無かった

60兆は少しずつ死に、また少しずつ生まれ直した

全体が僕だ

ドクンと、何ものかがあるべきリズムを奏でる
ドクンと

そう全体が僕であった

しかし、僕は気付く

始めからなったのだと

そう、始めから全体などは無かった


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