夜感光/山中 烏流
滴るものは
いけない、とされた口が
私の知らない場所で
反抗を覚えた頃
わざと首にかけた
新しいヘッドフォンからは
聞き慣れない音楽が
何故か、かかっていて
耳を塞いだ
時計は既に
直線を過ぎている
それを知りながら、私は
点滅する光に見とれて
窓を開こうとしている
持ち出した靴の先が
結露に触れた後
カーテンを揺らしたのを
気付かないままに、
私の指先は
窓際を器用に滑りながら
誰かの名前を
思い出そうとしている
朧気な輪郭は
触れた刹那、消えて
かじかんだ指先が
小さく、震えていたことを
忘れてはいけ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)