ジギタリス/ピクルス
にちは』
『…』
まったく、挨拶もしやしない。
今井さんとこの息子、駄目ね。
そのくせ、私が階段を上がる時には、下からジッと見てる。
気持悪いったら。
そう、あんなのとエレベーターで二人きりになるのは耐えられないから、
私は階段を使うのよ。
汗で白いキャミが肌に張りついてる。
ゆうべ、蚊に刺された首筋がむず痒い。
『ひゃ!』
薄暗い自転車置場で
いきなり背後から抱きすくめられた。
荒い吐息。臭い。
必死であらがうけど、全然動けない。
ごつい手が私の首にかかる。
知らない顔だ。
『どうせ、どうせ死ぬ…だ』
私は無事だった。
助けてくれたのは、
今井の息子。
『最近、変な奴が後を付けてたから気になってたんですよ。
無事でよかったす』
と笑った。
*付記
(昔々の日記より)
(いつか続く、かも)
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