ジギタリス/ピクルス
中指を立てている。
マスターは、私に気があるに違いない。
今夜は、特にそんな感じがして、だから確信したのよ。
妙にそわそわして、時折は私をチラチラ見てやがる。
ふ、ん。向こうからきたら寝てやってもいい、かな。
私だって渋谷で声かけられた事くらいあるさ。
ちょ、その前にトイレでチェックしとこ。
席を立ち上がろうとした私に、
マスターが意を決したような顔で近付いてくる。
(え?もう?そ、そんな急に…えと、えと、ちょ待って)
マスターは軽く咳払いをして
静かに云った。
『お客様、
大変申し訳ありませんが、
そろそろ看板ですので』
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