ひとり/
銀猫
十月の、
霧雨に染みて
薄紅いろの細胞膜が、
秋桜、
空に透ける
十月の、
夕暮れの風に惑って
枇杷いろの金木犀、
満ちる、そこらじゅう
それらの
秋という色や匂いに混じって
羽虫の擦れ合う音、
音が
からだのなかに
静かな水溜りをつくってしまう
わたしの、
手、
繋ぐはずの手のひらを
探しあぐねて
今宵、
夢の逢魔が刻にさまよう
寒くなる、
予感と、
掻き合わせた胸と
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