月とミントブルー/石瀬琳々
 
窓を大きく開け放ち
男はそのままの姿勢で倒れこんだ
夜風にカーテンがゆれるだけの
ささやかな部屋
カーテンの色はミントブルーで
男の好きな色なのだった
思い出の中で静かにゆれている
今も男の頭上であの日のブルーが
でも男は気づかない
手を投げ出した そのままの姿勢で


暗い雲が流れていき
月が顔をのぞかせた
満月ではないが限りなく丸い月だ
煌々と部屋を照らしている
男のうなじにも閉じられた瞼にも
壁一面に貼られた海の写真にも
ミントブルーの波が寄せてくる
部屋はいつか海になるだろう
月の光で満たされて
男の思い出で満たされて



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