秋に/乱太郎
秋を肴に一編の詩
まずいな
無口な月が雲隠れ
うまい酒は
そうあるものではないからな
あのひとがいなくなった
突然 ぼくには
あのひとにはもう会えない
おそらく ぼくには
辛い肴に
目が沁みてくる
秋を肴にもう一杯
冷たい秋風
あのひとのことなど
忘れてしまえ と
穂を揺らす
酔いに逃げて
あのひとを想う
影が残り
秋の海が波を上げる
もう
秋は深まりゆく
あのひとの詩は
海の底にでも
せめて
教えてほしかった
わけを
そのわけを
あのひとは
今夜月を眺めているだろうか
ぼくと同じ
まあるい月を
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