雨天決行/山中 烏流
折り畳まれた傘を
小さくまとめながら
ポールにもたれかかる私を
溜め息だけが見つめている
お婆さんが腰かける
その左隣に座りながら
私の右手は電磁波を帯びて
きっと、誰かを攻撃して
ななつぶんのむっつが
ぽっかりと空いた席
はじっこに寄りかかるひとは
その空虚に耐えているのか
いや、もしくは
あの透明な空虚には
私には見えないひとが
座って、いるのか
定かではないが
ぼんやりと曇った
ガラスの一寸先を
他の銀色が
足早に通り過ぎていく
もうすぐ終点のとき
私の隣には誰もいない
微かな温もりだけを残して
隣には誰もいない
窓の外では
たくさんのひとの目が
水を得た魚のように
すいすいと
泳ぎ回っている。
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