鏡恋歌/佐野権太
 
あいの里
しのつく秋の雑木(ぞうもく)
湯ぎりのしずく
かじかむむねのめぐみよ

髪を結い
知らぬみちをぬけて
はにかむ街へ
いつか人とはぐれて
ふちにたたずむ
銀のあかりあびて
なくなよわがみ

ちいさな風にうちあける
まよいごと
浮きわたる
うちゅうのくもに
ゆびをきる
まもりごと

あたためる湯の
かなわぬ頬に
あふれる祈りは
じょうぶに
ただ、じょうぶにと
花、花、うつくしくちる
花の想いよ
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