曼珠沙華/こしごえ
 

   いさり火の あかく燃えたつ 秋の暮れ



いっぴきの蜘蛛は、
自分の領分をわきまえて
一心に一糸の糸を張りめぐらす。
それはそれは正確で絶妙に

果して、
わたしはどうか
どうかせずにはいられない
この世で
存在することさえ難しい

難しいことは何もないと
紺青の夕暮方にたなびく雲を
こえてゆくのは蜘蛛に吸われた
魂か。
風をはらんだ ゆめの巣が
ささひかりはなち 宙に咲く








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