うたかた/しゅう
 
川上から
くちびるも切れないような
と、いう言葉が流れてきて
あわてて口角をぬぐう

せっかく飲んだ酒を
鴨川に吐き捨て
突っ込んだ手が、宙ぶらりん
いびつな弧を描いて
よどんだ虹がかかっている
酒と一緒にため息や、つばや、言葉、
いくつ飲み込んでいたのだろう

虹がよどんで、ぷくぷく
ぷく、と浮き上がる
鉛だか、水銀だか
砒素、鉄分、カルシウム
イメクラ、コスプレ、恋愛感情
感傷、暴動、希望、言葉
くち、びる
あわてて口角をぬぐう

傍らに、蕗の葉が萌えそめている
汚れた手でむしりとり、乱暴にぬぐう
ちくちくと繊細な毛が痛い

朝になれば、かぶれた手の傷口から
ぷくぷく
ぷく、とよどんだ虹が浮き上がる
鴨川に投げ捨てた蕗の葉にも
同じうたかたが流れ着いているだろうか
同じうたかたに、届いただろうか

光が、はじけていく
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