ハリガネのテンシ/Utakata
ほそい針金を曲げて
涼やかな羽のかたち
今までに
誰かをおとしいれた数の分だけ
硬質な円さを捻り切って
ひたすらに鎖を作ってゆく
今までに
誰かに嘘をついた記憶の数だけ
針金は鳴き声を立てない
どれだけ痛みを与えようとも鳴き声を持たない
鈍い抵抗を残して、従順に撓う――ふりをする
やがて
死んだ虫のようにあっけなく地面に落ちる
午前四時の色に染まったカーテンの影が
失われた音の余韻をゆっくりと踏み潰していった
記憶からこぼれ落ちた分の痛みは
どこへ
青褪めた色のたましいがひとつ
窓の外でぽつりと佇んでいる
滑らかな檻の中に閉じ込められた
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