動機/九鬼ゑ女
あってもなくても
同じだと
詩人は思っていた
どうでもいい今日が終われば
どうにかなる明日が待っていて
とっくに時化ちまった昨日ともおさらばだしな /しける
なのに
足しげくテリトリーに顔を出すあいつをみていたら
途端だ
躰中を虫唾が走りはじめて /むしず
電解質になって溶け始めたんだ
考えてもみろよ
一体なにが面白くって
毎日毎日、三度三度
メシをかっ込むみたいに
穴の開いたバケツに水を汲んでいるんだろう
だからどうなんだ?
そう問われても
銜えこんだ衝動は /くわえ
勝手に一人歩きして、
手におえなくなった詩人は
もういちどあいつに向かって唾を撒き散らす
そして
あってもなくても
決して抗えない後悔が
不安を巻き込んだナイフを手に
ぶきっちょな詩人の日々に仕返しに来やがるのさ
動機?
さあね
あるとすれば
……必然!ってとこか
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