腹を決める**分前/影山影司
漫画の中で、主人公ハチが妄想に駆られるシーンがある。広大な宇宙に普通服で漂う最中、宇宙服を着たドッペルゲンガーと相対するハチ。ドッペルゲンガーは言う。
「自分を鎧わずにこの大宇宙で生きていけると思うのか!?」
そしてドッペルゲンガーは宇宙服の中でミイラとなり塵となり、虚空へと消え去る。
このシーンが、頭の中でぐるぐる巡る。
僕の母船は何処だろうか。位置情報を知らせてくれる母船は何処だ。銀河を不平等に照らす太陽は何処だ。命綱はあるか。酸素残量は。無重力圏から有重力圏へ、そして次第に加速して大気の壁に削り取られて焼け崩れる。
仲間は何処へ消えた。
メディック、オペレーター、メカニック、パイロット。
何処へ消えた。
鎧わずに生きろと言う人々よ。
何処へ消えた。
剥き出しの核が悶えている。笑ってるんじゃないんだ。
楽しんでなんかない。必死なんだ。
広大な宇宙で、寒大な宇宙で生きて行くには無敵の強さが必要なんだ。
糞だ。チクショウ。
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